現時点でスカンク兄弟の名を知
る者は、ほとんどいないだろう。
それもそのはず、このバンドは、
ほぼクローズドな空間でのみ演奏
してきた、悪く言えば“内輪”の
グループだったからである。
 ただし、本作のリリースを機に
状況は大きく変わるかもしれない。
数々の離島を旅してきたマドロス
による叙情性豊かな詞と、モジャ
の温もりのある歌とメロディが溶
け合った楽曲の数々ー作品全体を
支配する“島時間のBPM”とも言
うべき心地よいタイム感が顕著に
表れた「シマノホホエミ」や「あ
こがれ」、合唱or鼻歌必至のポッ
プな「ポッコチピーダ」や「サマ
ータイヨー」、離島につきものの
“別れ”を描き、胸を締めつける
「ひなた彼方」、ひそかにNHK『
みんなのうた』を狙っている「島
々」などなど、これらは多くの音
楽好きを魅了するポテンシャルを
十二分にもっているからだ。その
ことは久保田麻琴と原田郁子とい
う2人の音楽家が、積極的に協力
を買って出たことでも証明できる
だろう。
 クラムボンやohana、あるいは
ソロ活動で常に注目を集める原田
郁子はピアノ、コーラスで全曲に
参加し、楽曲の世界観を広げるた
めに不可欠な役割を担った。久保
田麻琴は、決して十分な環境で録
音されたとは言えない音素材を、
市場に出してもまったく遜色のな
い完成度に仕立て上げた。
 都市生活者目線で島への“あこ
がれ”を歌った、新たな「島唄」
の誕生であると同時に、これまで
の“内輪”のみに留まらず、多く
の音楽ファンに聴かれるべき名盤
の完成である。
 なお、スカンク兄弟のファース
ト・アルバムである本作は、彼ら
の拠点、東京・池尻大橋のカフェ
〈太陽〉が興した〈太陽レコーズ〉
の第1弾でもある。
1.シマノホホエミ
2.汽笛をならせ
3.ポッコチピーダ
4.あこがれ
5.伊勢山
6.サマータイヨー
7.ひなた彼方
8.島々
9.僕のサンシャイン
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